鑑賞しましょう


作品について父に取材する息子


父・外志男の作品を、息子・誉と鑑賞しましょう。
ここは「鑑賞室1」です。

流水群鶴図

五羽の鶴が全て動きのある異なるポーズで、背景にも水の動きがあります。
「動」と「動」を重ねた斬新な構図で、外志男が特に気に入っていたCG作品です。

鶴は、古くから屏風絵の画材にされ、一般には上品な立ち姿が描かれます。
しかし、外志男の鶴は、ダイナミックです。
鶴たちには、生命の躍動と輝きを与えるのが正しいと、外志男は考えたのです。

「動」と「動」を組み合わせながら、全体で描いたのは、仙境の「静謐」です。
命と自然のたゆまぬ動きが重なると、それは静けさに収斂していくのです。

意識が薄れていく外志男のベッドサイドに、いろいろな作品を置きました。
この作品が、最期になりました。

赤 富 士

全国の無数のアーティストが描いてきた富士山の、外志男流のCG作品です。
斜面にさまざまな「赤」を使い、複雑な陰影と立体感を加えます。
神々しさとともに、生命体のような命の律動が描かれます。

星のコンチェルト


螺鈿(らでん)の星団の下に、平文(ひょうもん)や卵殻を組み合わせた、「ピアノの鍵盤」です。高さ60センチの蒔絵オブジェに、巨大な空間を描きます。

正面の形はグランドピアノを思わせ、色調もピアノブラックです。左上空からの星の光が、スポットライトを当てています。

天上の星と地上の鍵盤が、お互いを引き立て合い、響き合い、輝き合っています。蒔絵で表現した、天と地の和音です。

外志男は40歳を過ぎてピアノを習い始めました。いずれはリチャード・クレイダーマンのような曲を弾きたかったのでしょう。

光彩鬼灯図

  ガラス皿の中の鬼灯(ほおずき)は、まるで命の結晶です。
 冷たく透明なガラス皿が、果実との強烈な対比を生み出します。ほおずきの蕚(がく)はモザイク状で、一部が枯れかかっている様子がうかがえます。しかし中の実は、まるで心臓や魂のように生き生きと輝いています。
「鬼灯」の文字を当てるのは、死者の霊を呼ぶ灯明に見立てたという説があります。
 ほおずきも、私も、いずれは枯れる命。生きにくい今をそれでも生きています。

潮鳴


直接ご覧頂きたい作品です。実際は中央がくぼんでいるのですが、逆に中央が浮かび上がってくるように見える、不思議な作品です。

同じ太さのラインは一本も無く、中央が太く、左右が細くなっています。さらに上下を暗く、中央を明るいグラデーションにしました。

永遠の繰り返しは、外志男が好んで取り上げたテーマです。果てしなく続く「さざ波」を、外志男は50センチ四方の蒔絵角盆に表現しました。一つとして同じ形の波は無く、同じ音で砕ける波はありません。この一枚に、外志男は「永遠」を描いたのでしょう。

外志男は晩年、「群鶴図が2番、鳳凰が3番。1番はこれだ」というほど、気に入っていた作品です。

創世譜


日展初入選となった蒔絵パネルの作品です。畳1枚より大きいです。1988年、外志男51歳でした。日展を一つの目標としていたので、ありったけの精魂を込めた作品と言えます。

「初めに神、天地を作り給へり(創世記第1章)」。それは、どんな「天地」だったのか。外志男の解釈がこの作品なのでしょう。

高密度の黒い太陽が、不安定な軌道を刻みます。あらゆる元素が、出会いと別離を繰り返し、地殻が生まれようとしています。創世「譜」としたのは、混沌にも秩序とリズムがあるという、信念でしょう。

幾何学模様の組み合わせと、螺鈿・卵殻・平文を駆使する外志男のスタイルは、既にこの時、到達点にあります。

黎明

「潮鳴」と同じサイズの蒔絵角盆です。横線の連なりは同じように見えますが、こちらは、中央が縦に浮かび上がっているように見えます。

太陽がまさに水平線に顔を出した瞬間、手前まで光の道が伸びてきます。
外志男の考える「永遠」が、ここにもあります。

プロミネンス

全てを灼き焦がす深紅の炎です。
細かい螺鈿(らでん)と平文(ひょうもん)を組み合わせた、目も眩むような、圧倒的な細工です。
作品には妥協を許さない外志男の姿勢は、まさに炎のように燃え盛っています。
ところで、これは「丸盆」ではありません。角を数えてみてください。

「正二十二角形」です。放射状の線の角度は約16.364度です。
作りにくい角数をわざわざ選びました。直径70センチほどの「角盆」です。

外志男は「人が面倒と思うことも自分は出来る。これは才能かもしれない」と胸を張っていました。不要とも思える仕事に燃やす情熱が、外志男の「プロミネンス」です。

満開

  梅、牡丹が画面狭しと咲き誇ります。主役であるはずの孔雀までもが、花の陰に甘んじています。眩いばかりの命の迸りです。
  外志男には紅葉の作品が数多くあり、「桜はあまり描かないのだろう」と勝手に思っていました。
デスク周りを整理していて、偶然この作品を発見。仰天しました。

鑑賞室2でお待ちしております。